体幹トレーニングで運動パフォーマンスは向上するのか?いろいろ論文を読んでみた。

こんにちは。神戸・明石の身体の痛み治療専門 はりま接骨院です。

 

体幹を鍛えると運動パフォーマンスが向上する、ということで、現在多くのスポーツ現場で体幹トレーニングが行われています。

 

ですが、確かにパフォーマンスが上がった、という声もあれば、あまり実感がない・本当に必要なの?といった声も多いようです。そこで、体幹トレーニングの効果を実証実験している複数の論文をネットから拾って読んでみました。

 

結論からいえば、

うーん・・微妙・・・

というのが正直な感想です。

 

とはいえ、各論文で行われた実験は、トレーニングの期間、方法、被験者のスポーツ歴など様々に条件が異なっていました。

それで「体幹トレーニングは無駄」と結論づけるのもどうかと思うので、主だった論文を紹介しながら検証してみましょう。

 

巷で言われる体幹トレーニングのメリット

まず、体幹トレーニングはスポーツフォーマンスを向上させる、と言われていますが、具体的にはどういうことでしょう?

競技により「この能力が上がる」みたいなのがあると思います。

 

・サッカーでは当たり負けしなくなる

・野球では投球や打撃コントロール・スピードが上がる

・陸上競技は走・跳の記録が伸びる

・バスケは切り返しがはやくなるetc

 

ざっくりいえば、体幹トレーニングは走・跳・投の基本的な運動能力を向上させる、ということですね。

では、実証実験の結果はどうだったのか、みてみましょう。

 

体幹トレーニングの効果についての論文を読んでみた

まず「走る」「跳ぶ」からみていきます。

 

論文①短距離走に対する体幹トレーニングの効果
によると、競技スポーツ選手に約一カ月間、体幹トレーニング(静的エクササイズ群と動的エクササイズ群の2グループに分けて検証)を行い、期間前と期間後の短距離走のタイムを比較したところ、有意差は認められなかったとのことでした。
※「有意差が認められない」というのは統計学の言葉で、「AとBを比べてもあんまり差はないから効果があるとは言えないけどないとも言えない」という意味

静的エクササイズというのは身体を動かさず同じ体勢をキープして耐えるやり方、動的エクササイズは身体を動かすやり方です。

 

この実験では短距離走の効果はもう一つでしたが、跳躍系(立ち幅跳びと助走無し三段跳び)に関しては静的エクササイズをした人たちの記録は伸びたということです。

 

一方、こちら
論文②体幹安定化トレーニングが体幹筋群の形態、機能および運動パフォーマンスに与える影響
では、非競技スポーツ選手に動的・静的エクササイズを8週間行った結果、30m走の0-10m区間のタイムが短縮された、とあります。

こちらは逆に跳躍系の垂直跳びには効果なかったようです。

 

跳躍系については先ほどの論文①②に併せて、
論文③一過性の体幹スタビライゼーションエクササイズが垂直跳び、ドロップジャンプ、リバウンドジャンプのパフォーマンスに及ぼす効果
で述べられています。バスケット選手に関心高そうな試技項目ですね。


被験者は「健康な20歳前後の男子」としか書いていませんが、体育大学の生徒と思われるので、競技スポーツ選手とみてよいでしょう。


結果はというと、試技前に静的エクササイズを行い計測した場合と、素で試技をした場合を比較しましたが、垂直跳びに有意差なしとのことでした。

 

しかし、着地後に即跳躍するドロップジャンプ、跳躍と着地を繰り返すリバウンドジャンプについては有意差あり。

ちなみに動的エクササイズでは有意差はみられなかったようです。

 

注意しないといけないのは、体幹トレ―ニングを一定期間継続する前とした後の実験ではなく、体幹トレをやってすぐ試技した記録と、やらずに試技した記録の比較ということです。

現場のスポーツシーンに置き換えると、ウォーミングアップに体幹トレーニングをしたほうが調子があがるかどうかということですね。

 

バランスボールを使用した体幹トレーニングについても実験されています。
論文④バランスボールによる体幹トレーニングが跳躍力に与える影響

健康な男子大学生(競技スポーツ経験者か不明)週4回のトレーニングを2ヶ月間継続したところ、立ち幅跳び、垂直跳びに有意差はなし、とでています。

 

切り返しについてはこちら
論文⑤切り返し動作に体幹深部トレーニングが即自的におよぼす影響

被験者は20代男女のサッカー、バスケ、ハンドボールの3年以上競技経験者ですが、現在1年以上運動していません。元選手ということですね。

試技前に体幹トレをした場合としない場合を比較する、いわばウォーミングアップに体幹トレしたらパフォーマンス上がるのかどうか的な実験です。

結果はというと、元々体幹の安定性を欠く者には有効であったものの、そうでない者に効果はなかったということです。

 

切り返しといえば反復横とびが関係するのでは?と思い他の論文をみてみると、論文②では、継続的な体幹トレーニングで反復横とびの回数が増えた、とあります。

これは切り返し時にバランスが良くなったので回数が増えたのか、単順に持久力がついたから増えたのかちょっと判断つきかねますね。

 

体幹トレーニングでバランス能力が上がる?

さて、体幹トレでパフォーマンスが上がるとされる根拠に「バランスがよくなるから」と言われています

 

人間は腕や脚の四肢を動かすとき、まず先に体幹の筋肉が収縮して胴体を固定してから四肢を動かす筋肉が活動しだすので、体幹が安定していればそれだけパワーロスが少ないし早く四肢を動かせるというのが理由です。

 

しかし、論文②では、継続的体幹トレーニングを実施してもバランスディスク上の開眼片脚立ちテストのタイムに有意差なし、という結果。

片脚立ちは持続的なバランス能力になりますので、では、瞬間的に体勢を整えるバランス能力はどうかというと、これは論文③のドロップジャンプ・リバウンドジャンプに有意差あり、ということなので、一応体幹トレ―ニングは有効といえるかもしれません。

 

ちなみにバランスボールやバランスディスクを使用したエクササイズは、ふだん運動をしない一般人には効果が認められていますので、老人介護や医療リハビリでも盛んに行われています。

しかしこと競技スポーツ選手のバランス能力アップに有効かどうかと言うと今ひとつのようです。

 

体幹トレーニングでケガ・故障の予防や治療になる?

体幹を鍛えたらケガの発生予防と改善効果がある、ともいわれています。

 

事実、多くのチームで予防として、治療現場でリハビリの一環として体幹トレーニングをしています。

 

論文⑥高校男子サッカー選手における入学年度別の体幹筋機能と運動時腰痛発生の経時的変化
では、高校サッカー部員を対象に3年間に渡って体幹トレを続けたグループとそうでないグループに分けて、腰痛の発症と改善を追跡しています。

体幹トレを続けたからといって、腰痛を回避できたわけでも腰痛が改善したわけでもないという結果になっています。

 

スポーツ選手のケガ故障は多岐に亘るので、腰痛だけをとらまえてどうこういうつもりはありませんが、一昔前は腰痛改善には腹筋強化と言ってたのを、今は体幹トレーニングしましょうと言葉を替えているだけのように思えるので、なんだかなぁという感じですね。

 

体幹トレーニングの個人的見解

このほかにもいろいろ論文を見て回りましたが、ことスポーツ選手に関して「体幹トレーニングでパフォーマンスが上がった!」ていうものは発見できず。

どの論文を見ても微妙な言い回しで効果ないことないよ~」と言ってる感じでした。

対象者の数が少なかったとか、期間が短かった、試技のやり方が難しかったとか、も一つ歯切れが悪い論文もたくさんありました。

 

なので私個人としては、

体幹トレーニング、無駄にはならないけど、そない一生懸命する必要ないんじゃない

て考えです。

 

やってパフォーマンスが上がる人はいるけど、やったからといってパフォーマンスが下がる人はいない。

ということは、鍛えた体幹をうまく使える人と使えない人がいる、ということかもしれませんね。

 

ウェイトトレーニングと同じく、体幹筋を鍛えるだけでなく、それを競技の動きに落とし込む作業、つまり実践練習が必須でしょう。

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