ギプスを外しても治らない足首捻挫 / 神戸滝川第二高校サッカー部K君の治療例

蹴躓いたり、段差を踏み外したりしたときグキッとやってしまう足首の捻挫。

 

軽症重症かかわらず、みなさん一度は経験したことがあるはず。

 

ほとんどの場合、足首を捻挫しても、

 

まぁ放っておいたら治るやろ

 

と、日にち薬で放置してたら知らん間に痛み無くなって治ったー、てなりますね。

 

でも、腫れあがってブワーッと内出血して、脚を地面に着けないくらい痛い!ってなると話は別。

重症のときはギプスを巻いて暫く固定しないといけないこともあります。

 

今回は、足首の捻挫をギプス固定してたサッカー選手K君の治療のお話です。

 

ギプスを外してしばらく経っても、やっぱりまだ痛い・・・

 

「ギプスを外す=治った」じゃない?なんでまだ痛む?

 

その原因は、なんとギプスの副作用なんです。

 

ギプスによって何がどうなって治らなくなったのか?

 

ギプスのあと足首の痛みがなかなか治らない方は、ぜひ読んでみてください。

 

サッカーでよくある足首の捻挫

K君が足首を捻挫したのは来院の約3か月半前。

 

サッカーの練習中、左脚を伸ばしてボールをキープしようとしたところ、相手に足先を横から蹴られて受傷しました。

 

だいぶん腫れたので、心配になって整形外科に。

 

骨はなんともなかったのですが、「靭帯が切れかかっている」と言われて10日間のギプス固定。

 

医師にもう大丈夫と言われてギプスをとったものの、走るのもボールを蹴るのも痛みが残っていたそうです。

 

しばらく経ったら痛みも治まるやろー、と思っていたものの、一向に良くなる気配もなく。

 

私の接骨院でケガを治した先輩がいたことを知り、来院されたのでした。

 

インステップキックで痛む足首

足首まわりをよく観察すると、少し浮腫(むく)みが残っています。

 

循環障害、つまり血の巡りが悪いとこうなりますが、治療を進めていけば自然と退くのでとりあえず置いておきます。

 

普通に歩いたり、足首を伸ばしたり反ったりするのは大丈夫。

 

でも、足先に内側から外側にむけて力をかけると外果(そとくるぶし)の辺りが痛むそうです。

インサイドキックで痛む足首

 

インステップキックで痛いし、これでは足先を伸ばして積極的にボールをとりにいくことができませんね。

 

足首の痛みの原因は筋膜にアリ

外果の辺りを触診でじっくり探ってみます。

 

ほんの小さい範囲に、そこだけ細いスジのような硬さを感じる部分があります

 

ピンポイントで抑えると、「あ、そこです!そこが痛むところです!」とナイスな反応。

足首捻挫の発痛場所

外くるぶしのごく小さい範囲の痛み

でも、この痛いところには筋肉は付いていないんです。

外果に付く筋肉はない

 

靭帯じたいの損傷は10日もギプスを巻いていたら治っているはず。

 

じゃあ何が痛みをだしている・・・?

 

実はこの硬くなって痛みをだしているのは、筋膜の捩れなんです。

 

筋膜についての詳しい説明はこちら

関連記事「筋膜とは?歪みとは?」

 

 

筋膜の捩れを作るギプスの副作用

筋膜の捩れができたメカニズムはこうです。

 

グキッと捻挫。

 

⇒捻挫をしたら腫れてくる。

 

⇒腫れた足にギプスを巻く。

 

⇒始めのうちはギプスはジャストフィットしている。

 

⇒腫れが退くと足が少し小さくなって、ギプスが緩くなる。

 

⇒ギプスの中で足が動くので、外果が内壁に当たる。

 

⇒外果の筋膜は内壁に押しつけ捏ねられて捩れる。

 

⇒捩れた筋膜は硬くなって痛みを出す。

 

めちゃくちゃ簡単な例でいうと、サイズのあっていないスキーやスノボのブーツを履いていたら足が痛くなった、っていうのと同じです。

 

試しに「スキーブーツ 足 外くるぶし痛い」で画像検索してみると、同じように「くるぶしに痛みがあります」的な画像がいっぱいでてきます。

 

でも、スキーブーツの痛みは放っておけば治るけど、K君のはサッカーを休んで安静にしてたのにも関わらず、良くならなかった。

 

その原因は二つあります。

  1. 靭帯や筋膜の損傷が元からあった
  2. 関節がズレたままになっている

 

関節をズレたまま固定した弊害

足首をグキッとやったときは、筋肉や靭帯が損傷するのと同時に関節がズレます。

 

足首捻挫のメカニズムについてはこちら

⇒なぜ足首の捻挫はクセになるのか

 

ギプス固定で筋肉や靭帯の傷は治るんですが、ズレは治りません。

むしろズレたままギプスで固められてしまうので、関節本来の動きを取り戻せなくなることが多いんです。

 

K君の足首が治らないのは、ごく小さい、けれど強力に固められた筋膜の捩れと、関節のズレが残っていたからなんですね。

 

これがスキーブーツの場合と違うところです。

 

治療は関節整復と筋膜矯正が有効です

関節のズレは一回の整復操作で元にもどすことができましたが・・・

 

施術の三日後に調子を訊いたところ、まだ痛みます、と。

 

筋膜の異常が少なければ、関節を治すだけで治っていくことも多いんですが、今回はそうはいきませんでした。

 

だいぶんギプスの中でこねくり回されたからでしょう。

 

健康な筋膜はいわばストッキングのようなもの。

ギプスで圧迫されこねくり回されたK君の足首の筋膜は、太さ1ミリもない、長さ2センチほどのゴム紐みたいな捩れが出来上がっています。

 

こういうのはちょっと痛いけど、一旦潰してやった方が治りが早いんです。

 

指先の感覚を頼りにピンポイントで矯正、数秒痛いのを辛抱してもらったら捩れがなくなりました。

 

疼痛誘発テストをしてみると

 

「痛くないです!」

 

よし、これで明日から練習でボール蹴ってみて!

一週間後に来院して、足の具合教えてね!

 

と告げて、一週間後に来てもらったら

 

満面の笑みで「足、ぜんぜん大丈夫です!」

 

長いあいだ思いっきりプレーできなくて塞いでいたものだから、よっぽど嬉しかったんでしょうね。

 

私もK君の期待に応えることが出来て、本当によかったです。

↓K君に三回目の来院時に感想を書いてもらいました。↓

 

 

ちなみにK君は股関節・鼠径部痛(グロインペイン症候群)にもなっていましたが、足首の治療と同時進行で同じく二回で完治しました。

 

まとめ

  • ギプス固定は筋膜の捩れを作って痛みを長引かせることがある。
  • 関節のズレはギプス固定では治らない。

 

今回のような部分的に非常に硬くなった筋膜は、ピンポイントに狙いをつけた施術が一番効果的で早く解れます。

 

関節のズレは運動療法やトレーニングで戻す方法もあるんですが、時間かかるし効果がでないことも多いです。

直接手で治す柔道整復の施術のほうが結果が早いですよ。

 

足首の不調はバランスを悪くしていろんな故障の元凶になるので、早めに私たち柔道整復師や鍼灸師に相談してくださいね!