ハムストリングス肉離れの痛みが治療をうけても治らない理由

肉離れは、誰でも経験したことがあるスポーツ傷害の代表的なケガです。

ぶっちゃけ放置してても日にち薬で治ることが多いけれど、治療に掛かってもなかなか治らないケースもあります。

あなたもそうかもしれませんね。

 

当院には、

整形外科や整骨院に通ってるけど治らないからなんとかしてほしい

ということで、紹介やネットを見て来院される方がたくさんいます。

なので、ケガしたてのなりたてホカホカの肉離れより、一週間以上経って来院される方のほうが圧倒的多数です。

 

半年以上ずっと痛いという方、県外から来院される方もおられるので、効果的な治療のできるところが少ないということかもしれませんね。

 

そういう方たちが受けてきた、治らなかった治療には共通点があります。

それは何か。

なぜ治らないのか。

何が原因なのか。

そのあたりを解説していきます。

 

ちょっと長くなるので、先に結論を知りたい方は下のメニュー「まとめ」をチェックしてくださいね!

肉離れとは

打撲傷

筋繊維が自家筋力や外力によって微細に避けたり切れたりして受傷します。

受傷直後は炎症(腫脹・熱感・発赤・内出血)があって、動かさなくてもズキズキ痛んだり(自発痛)、体重を掛けると痛んだり(荷重痛)します。

ふつうは放っておいても3日痛から長くて2週間もすれば完治に至るとされています。

ハムストリング肉離れの受傷メカニズム

まず、ハムストリングがどのようにして肉離れを起こすのか、そのメカニズムを解説していきましょう。

 

肉離れは、筋肉が収縮して力をだしている最中に、引き伸ばされる力が加わると受傷します。

 

“走行”を例に解説していきましょう。

ハムストリングが収縮して力を出すのは、脚を後ろに送るときと、膝を曲げて踵をお尻に近づけているときです。

 

 

簡単に言うと、”ダッシュで後ろ脚で地面を蹴って身体を前に進めているとき”に、ハムストリングに引き伸ばされる力が加わると肉離れになる。

 

ではハムストリングを引き伸ばす力はどこから来るのか?というと、それは主に太腿前の大腿四頭筋です。

 

大腿四頭筋は、脚を前に振り出すときと、膝を伸ばすときに収縮します。

 

 

ハムストリングのカウンターパワーになっているんですね。

 

ハムストリングが収縮して力を出しているときは、大腿四頭筋は邪魔をしないように力を抜いて伸ばされる。

大腿四頭筋が収縮して力を出すときは、ハムストリングは力を抜いて伸ばされる。

 

タイミングよくハムストリングと大腿四頭筋の力を抜いたり入れたりして、走るという動作がスムーズにできるんです。

 

タイミングがズレて、大腿四頭筋が力を抜かなければならないのに入ってしまうと、関節を介してハムストリングに対抗牽引力が加わります。

それで肉離れになるんですね。

 

 

ちなみに大腿四頭筋が収縮してるときにハムストリングの力が入ってしまうと、太腿前の肉離れになります。

 

では次に、メカニズムはわかったとして、なぜタイミングが狂うのかを治療目的に絡めて解説していきましょう。

肉離れの治療

肉離れの治療には、

痛みの除去を目的とするもの

原因の解消を目的とするもの

の二系統あります。

どんなものか解説しましょう。

痛みの除去を目的とした治療

肉離れは筋繊維の損傷、つまり切り傷や刺し傷と変わらないので、ぶっちゃけいえば放っておいても治っていくことのほうが多いです。

受傷直後の痛みは炎症反応によるもので、生理学的に炎症は安静にしていたら72時間、つまり3日で治まるからです。

といっても全く筋肉を使わず生活するとか無理なので、じっさいは長くて2週間くらいで治るとされています。

その期間の痛みを和らげるのに炎症反応を抑える効果がある湿布やアイシングで治療します。

 

問題は、炎症が治まってるのにまだ痛む場合があることですね。

 

なんでかというと、損傷した筋繊維が元のように上手く伸び縮みできなくなっているからです。

簡単に言えば硬くなってるんですね。

 

周りの健康な筋繊維の伸縮率と、損傷した筋繊維の伸縮率が異なるので、筋肉全体を動かしたときにその差を神経が感知して痛みを感じるのです。

硬くなった筋繊維を軟らかくする方法は、マッサージやストレッチ、筋膜リリース、電気治療、鍼灸治療などがあります。

セルフでするもよし、療術師に施術してもらうもよし。

治療効果はセルフ<療術師です。

といっても療術師の施術効果は技術次第なのでピンキリなのは言うまでもありません。

肉離れの原因に対する治療

肉離れの原因は、いわゆるオーバーユース(使いすぎ)とされています。

練習のし過ぎで上で書いた”メカニズムのタイミング”がズレるんですよ、てことです。

で、練習のし過ぎで身体がこんなことなってますよ!てのと、その処方は以下のとおり。

  1. 筋疲労の蓄積
    ←休養(練習の休止)、安静、睡眠、栄養補給など
  2. 筋力のアンバランス
    ←筋トレ、フォーム改善、テーピング、サポーターなど
  3. ウォーミングアップ不足
    ←ストレッチ、ウォーミングアップ指導など
  4. 筋肉の柔軟性低下
    ←マッサージ、ストレッチ、筋膜リリース、施術療法など

肉離れ治療の流れ

肉離れで整形外科に行くと、「しばらく練習休んでシップ貼って様子みといてください」と言われますよね?

あれは”原因に対する治療・筋疲労の蓄積”と、”痛み除去の治療・損傷筋の炎症”に対する処方なワケです。

で、しばらく休んでるうちに炎症が治まって筋繊維の柔軟性が戻れば完治です。

リハビリで筋トレやフォーム改善、施術でマッサージやストレッチを加えると、他の原因も解消されるので完治が早まります。

 

となればいいけれど、痛みが退かない・治ったと思って練習再開したらまた傷みだす、てなるのが厄介なところですね。

それはなんでか?

硬くなった筋繊維が軟らかく戻ってないから。

なんで軟らかくならないのか?

次にその理由を解説していきましょう!

硬くなった筋繊維の柔軟性が戻らない理由

理由は二つ。

①硬くなった筋繊維に施術の刺激を伝えづらい

②関節の働きを考慮していない

硬くなった筋繊維の施術が難しい理由

肉離れになったハムストリングを探ると、硬くなった筋繊維の塊・筋硬結と呼ばれるコリコリのシコリができています。

硬結は種類があり、形によって痛みの感じ方が違います。

硬結の形と痛み方を、私の経験から、4パターンに分けてみました。

 

1.ボール状の硬結は筋腹に形成され、表面からボコっとした感触がわかります。

ハムストリングにストレッチをかけたり力をいれたりすると、この部分に限定的な痛みを感じます。

私の経験上、一本の脚にできるのは一個だけで、複数できているのは見たことありません。

 

2.ライン状の硬結は筋腹から膝裏にかけて、もしくは筋腹から座骨付着部までに形成されます。

引き攣れるような、引っ張るような痛みを感じます。

殆どの場合、複数のライン状の硬結が隣接しています。

 

3.整形外科で坐骨結節炎と診断されるパターンです。スプリンターに多い損傷です。

坐骨にハムストリングが付着する坐骨結節に、微細な肉離れが折り重なり小さな硬結の集合体が形成されます。

運動時の明確な痛み、痛みまでいかない曖昧な違和感を訴える選手も多いです。椅子に座っているとだんだん痛くなることもあります。

 

4.筋間中隔筋膜癒着は、ハムストリングを包む筋膜と、他の筋の筋膜が、太腿内部でくっつきあうものです。硬結ではないんですが、肉離れ後遺症に多くみられるパターンです。

ストレッチや股関節を内外に捻じるとき、くっついたところが剥がれようと引っ張り合って、太もも深部に引き攣れたような痛みを感じます。

 

1から4を複合して損傷している選手も多いです。

2のライン状に1のボール状があることが多く、3が起点となって2が繋がっていることも多いです。

1と3、3と4の組み合わせは少ないように思います。

 

このパターンはMRIやエコーである程度判読できます。

特に座骨結節得炎はレントゲンでも薄っすら白く映ることもあります。

 

硬結はハムストリングの中にあって、その上に軟らかい脂肪層、硬い真皮と表皮が覆っています。

要するに肉の奥にあるので皮膚の上からモミモミするくらいじゃ影響を与えられないんですね。

それなりに強度のある指圧で以て硬結を探し出し、捉えて解す技術が必要なわけです。

 

でも、めちゃめちゃ効果的な施術で硬結を解して軟らかくできても、それだけじゃ不十分なことがあります。

また元のように硬くなってしまう。

その問題を解決するのは、関節機能が重要なカギになります。

関節機能低下と筋肉

ここで言う”関節機能の低下”は、よく言う「身体が硬い」=関節可動域が狭い、ということじゃありません。

関節が「正常な軌道で動かなくなっている」ということです。

柔道整復では亜脱臼、理学療法では関節アライメント不良と呼ばれる状態です。

俗にいう”関節のズレ”とか”歪み”とか言ったら聞いたことあるんじゃないかと思います。

 

関節は筋肉で動かされると同時に、筋肉の力の方向を導きます。

なので関節がズレて歪んでると、筋肉の力の方向が乱れるので、筋力が低下しますし、関節の安定性も低下します。

 

例えば足関節がズレると安定性が低下するので、片足立ちになったときにバランスを取りづらくなります。

ぐらつきを抑えてバランスをろうとすると、脹脛や太腿やお尻の筋肉をめちゃくちゃ使います。

余分な力を無意識に出し続けることになってしまっているんですね。

これがオーバーユース(使いすぎ)の本当の意味です。

練習しすぎとかじゃなくて、無意識のうちに筋肉を酷使して使いすぎてますよ、てことなんです。

 

ハムストリングと大腿四頭筋双方にダイレクトに関与する膝関節でみていきましょう。

膝関節がズレたら膝関節を構成する大腿骨と下腿骨の相対位置が本来の位置から少し狂います。

 

 

すると膝関節を跨ぐ大腿筋の外側と内側のテンションに微妙な差が生まれます。

僅かに引っ張られる筋繊維と、わずかに緩い筋繊維が無意識のうちに出来上がるので、このまま運動をすると引っ張られすぎてる筋繊維には過剰な負担がかかってしまいます

このような筋肉内の各繊維の不均一さが、メカニズムで言った「タイミングをずらす」原因になり、痛みが治ってもしばらく経ったらまた元に戻ってしまう原因になるということです。

 

図はかなり誇張して膝関節を歪ませて書いてますが、実際のズレは極わずかなので素人目には全くわかりません。

実はレントゲンに映るんですが、整形外科医はヒビが入ってるか折れているか以外は異常なしの立場なのでスルーしてます。

たまに「関節の隙間が狭いね」て言うくらいですね。

それに関節は三次元的に上下左右前後旋回と複雑にズレます。

視診触診検査の技術と、関節のズレを正常に戻す整復技術が必要になります。

 

あと、肉離れになるとよくやるストレッチやテーピング・サポーターについて書いていきます。

ハムストリング肉離れのストレッチやテーピング・サポーターは有効か?

ストレッチのメリットとデメリット

<メリット>

筋肉にストレッチをかけると軟らかくなることは科学的に証明されています。

全体に軟らかくなれば、ハムストリングが伸縮したときに硬結に加わる力が弱くなるので、痛みは緩和されます。

<デメリット>

ハムストリングにストレッチをかけても、伸びるのは硬結以外の健常部分だけです。

硬結部分と健常部分の境界や、筋繊維の付着部に牽引力や旋断力が働くので、筋繊維は微細に損傷します。

 

ストレッチを痛いのを我慢して繰り返す人ほど重症化しているのはこのためなので、今すぐ止めましょう。

ストレッチは「伸びて気持ちエエわぁ」てくらいで十分です。

 

テーピング・サポーターのメリットとデメリット

<メリット>

サポーターやテーピングの圧迫力が、健常部分と硬結部分の境界に働く牽引力を分散させるので、痛みは緩和されます。

<デメリット>

圧迫による循環障害によりハムストリングの血流が低下し、エネルギー供給不足と老廃物除去機能が低下します。

血液の供給不足は損傷部の回復の妨げになります。

筋間中隔に損傷がある場合、圧迫すると中隔の筋膜が圧着されて、癒着が広がり悪化します。

なので常用はやめといたほうが良いでしょう。

 

まとめ

  • ハムストリング肉離れは日にち薬で治るものと治療に掛かっても治りにくいものがある
  • 治りにくいのはハムストリングの中の一部の筋繊維が柔軟性を失い硬結になるから
  • 硬結は皮膚・脂肪層・筋層の奥にあるので施術効果を出すには高い技術が必要
  • 関節のズレがあると筋肉に余分な負荷をかけて柔軟性を低下させる
  • 関節のズレを正しく戻すのは柔道整復術が有効
  • ストレッチは痛いのを我慢してやると悪化するので止めよう

 

いかがでしたか?

今回はハムストリング肉離れについて解説しました。

もしあなたが、今もハムストリング肉離れの後遺症に悩み、満足なパフォーマンスを発揮できないでいるのなら、きちんと硬結を取り除いて関節を治してくれる術者を探してみてください。

 

この記事が、あなたの復活のお役に立てれば幸いです。

参考に当院の施術を受けた方の感想を載せておきます。

 

ハムストリングス肉離れの治療を受けた方の声

 

ハムストリングス肉離れの治療を受けた陸上選手の声