ランナー膝(腸径靭帯炎)とハムストリング肉離れで歩けなくなったマラソンランナーの改善例

マラソンランナー

患者さんプロフィール

 

N・Oさん 35歳 女性

 

悪化する前は継続的にランニングをしてマラソン大会に出場したり、登山をしたり活動的な趣味を楽しんでおられました。

 

痛みを感じる場所と動作

痛みのある場所

<右臀部(お尻)>

歩くと痛い

常に重くだるいような鈍痛がある

お尻から太腿裏にかけての引きつるような痛み

 

<右太腿後面ハムストリングス>

歩くと痛い

ストレッチをすると引き攣るように痛い

 

<右膝外側腸径靭帯>

朝目覚めると痛みがある

歩いたり階段で痛い

痛くて走れない

膝の曲げ伸ばしで痛い

 

<右膝関節>

曲げると痛い

正座ができない

 

<各部ペインスケール>

痛みが一番強い膝外側を10とすると、太腿後面9、お尻8

 

なかなかの重症です。

 

来院するまでの経緯

 

約2年前の大阪マラソンを走っているときに右膝外側に痛みを感じたものの、我慢して完走したそうです。

 

翌日に歩けないほどの痛みになったので整形外科を受診、レントゲン検査で異常は無く、ランナー膝(腸径靭帯炎)と診断をうけました。

安静を指示されたので、しばらく運動を控えていましたが一向に改善しませんでした。

 

以降、県内のJリーガー主治医やスポーツ治療のリハビリが充実している整形外科、ランナー膝専門の整骨院、鍼灸院にそれぞれ数ヶ月通院したものの、なんら快方に向かわずむしろ悪化していったとのことです。

 

ついに3キロの通勤路を歩くにも痛みで休み休みでやっと着くという状態になって、「これまでと全く違う治療をするところはないか」とネットで探すうちに当院のサイトを見て来院を決断したということでした。

 

初診時の身体の状態と考察

 

問診と触診で判明した筋肉(筋膜)と関節の異常は以下の通りです。

 

  1. 右お尻の筋肉群の硬化
  2. 右太腿外側(腸径靭帯と外側広筋)の筋膜の硬化と筋膜層の癒着
  3. 右ハムストリングスの筋膜の硬化と筋膜層の癒着
  4. 右ふくらはぎ外側の筋肉の張り
  5. 右仙腸関節の可動性減少(骨盤の歪み)
  6. 右股関節の可動動性減少
  7. 右足関節の可動性減少(足首の歪み)
  8. 胸椎下部の可動性減少(身体の歪み)

 

1~4は筋肉(筋膜)の異常で、5~8は関節の異常です。

膝関節そのものには問題がありませんでした。

 

関節と筋肉はセットで悪くなるので、Oさんの場合は

 

①仙腸関節・股関節と臀部筋・とハムストリングス・腸脛靭帯がセット

②足関節=ふくらはぎがセット

 

あと、足関節は歪むと片脚になったときに身体を支えられず不安定になります。

 

それで重心バランスをとるために身体じゅうの筋肉を使って帳尻を合わせようとします。

 

すると姿勢が崩れて背骨が歪むので、胸椎下部の可動性が減少したと考えられました。

 

ランナー膝は「使いすぎ」で腸脛靭帯が傷むのが原因といわれていますね。

 

でも、ランニングを休んでいればある程度回復するけれど、復帰したらまた痛くなるなんてのはザラです。

 

Oさんのように、治療にかかっていたけど全然良くならないという人もけっこうおられます。

 

なんでそんなことになるのかというと、それは腸径靭帯に過剰負荷がかかる原因を取り除けていないからなんです。

 

腸径靭帯は、片脚立ちになったときにバランスを保って上体を安定させる重要な機能を持っています。

 

 

腸径靭帯はバランスを保つときに働くので、バランスが悪いと仕事が増えて疲れきってしまう。

 

Oさんのケースでは、バランスを乱す要因となりうるものは”足首の歪み”と”身体の歪み”がありますが、もう2年間酷い症状でいます。

 

痛みじたいを避けるために身体を歪めていたのか?

硬くなった筋肉が関節や背骨を引っ張って今の状態を固定しているのか?

 

どちらが先かはもうわかりませんが、まず痛みを改善することで施術に「ここで治る」という希望を持ってもらい、段階的に関節の歪みを直していくことにしました。

 

治療計画と施術の経緯

 

2年という期間で悪化していったものなので、痛みを発し症状を固定している筋膜の癒着を治すことから始めました。

 

癒着が改善されればまず痛みが劇的に改善します。

筋機能が回復されると筋力が増えるので、関節の安定性の改善にも繋がります。

 

本人の「早くマラソンや登山ができるならどんな治療でもいい」という強い要望があったので、指圧矯正による強力な施術で治療を進めていくことになりました。

 

施術1回目 ガチガチに硬い太腿

 

ハムストリング内のシコリ状に固まった筋硬結を探しだし、ピンポイントで潰します。

この硬結はトリガーポイントとも呼ばれます。

 

筋繊維や筋膜の伸縮を妨げるので、引き攣るような痛み(いわゆる坐骨神経痛)を生み出します。

 

次に、癒着している腸径靭帯と太腿外側筋を、膝の外側からお尻の横側にわたって剥がすように施術しました。

 

Oさんに施術終了直後の効果を訊いてみました。

 

●お尻の鈍痛がなくなり股関節が動かしやすくなった

 

●膝外側に体重がかかったときの痛みが軽減

 

●段差の上り下りの痛み消失(階段のような連続した段差では不明)

 

●脚全体が軽くなり院内を歩く程度なら身体を傾けず真っ直ぐな姿勢であるけるようになった

 

なので、施術後は「次回来院までできるだけ運動してください。ランニングできそうならしてみいですよ」とお伝えして一回目は終了です。

 

え?走っていいんですか?

 

と驚かれていましたが、これには理由があります。

 

指圧矯正は硬くなった筋繊維を”解す”、というより”壊す”に近い方法です。

いったん壊してやって筋繊維を軟らかく再生してやるというなかなかな荒療治です。

 

筋繊維の再生には血液が不可欠で、血流量を増す最善の方法は筋肉の収縮、つまり運動なんですね。

 

施術直後の改善度が日々の運動でどう変化していくかを観察してもらうためでもあります。

 

施術2回目 起床時の痛み消失

 

一回目の施術日から3日間、身体の変化と症状の推移を観察しながら過ごしてもらいました。

 

二回目の来院時に報告してもらった内容は以下の通りです。

 

●施術翌日の朝は痛みを感じることなく起床できたので正直驚いた

 

●歩くのに関しては全体的に痛みは改善しているものの通勤距離3km途中で痛みが激しくなり休みながら歩いた

 

●階段を降りるときの痛みはなくなったが、上るときの膝外側の痛みはある

 

●歩くときの太腿後面の引き攣るような痛みは軽減したが、姿勢によって引き攣ることがある

 

●ランニングに関しては開始時から膝外側に痛みがあったのですぐに中止した

 

●しゃがんだり正座をしたりといった膝関節の深度屈曲は痛くてできなかった

 

筋膜の癒着を剥がす施術の効果がしっかり現れていました。

 

しかし指圧矯正施術によるダメージが抜け切れていないようだったので、2回目と3回目の施術は足・膝・骨盤・背骨の歪みを整復し、脚全体に超音波治療器をかけ組織の回復を促進させることにしました。

 

施術4回目 日常生活支障なし、ランニング再開

 

施術2回目移行は週一回ペースの来院で治療。

 

3回の施術を終えた時点での身体の変化と症状の推移は以下の通り

 

●歩くときの痛み消失、朝の通勤距離3kmの歩行全く問題なし

 

●ゆっくり5kmほどのランニングなら痛みなし、早いペースはまだ不安とのこと

 

●朝起きたときの痛みなし、ただしランニングや長時間歩いた翌朝は脚全体に張りを感じるとのこと

 

●階段上り下り問題なし

 

●しゃがむのは問題ないが、正座はまだ膝奥に痛みを感じる

 

●骨盤と背骨の歪みを改善したことで、股関節の可動域も改善し、立ち姿・歩き姿ともにバランスの良い格好となった

 

回復を妨げる最大の難物・筋膜癒着がなくなったことで、大幅な改善効果を得ることが出来ました。

 

足首・膝・骨盤・背骨の歪みを直しバランスの回復も得ましたが、筋膜癒着が残っていれば早いうちにまた歪んでいきます。

 

関節と筋肉は連動していて、筋膜は両者を包んで動きを統合する働きを持ちます。

 

ここまでこじれた症状だと、一方を良くしても悪いままのもう一方に引き戻されてしまうことが多いのです。

 

こういう場合は、施術後しばらく調子はいいけど期間が経てばまた痛みがでてきて再発を繰り返します。

 

施術4回目~6回目まで腸径靭帯全体の柔軟性を高める手技と、各関節の整復矯正を行いました。

 

施術7回目 痛み消失、しかしストレッチは

 

施術4回目~6回目までの変化は以下のとおりです。

 

●4回の施術が終わった時点で10kmランニングで痛みなし。ランニング後も痛み無し

 

●しかし太腿外側と膝から下の外側に張りと重だるい感がある

 

●6回目の施術後に4時間ほどの山登りに参加、右太腿の外側と後ろに張りを感じたが久々の登山で嬉しかった!とのこと

 

●日常生活で痛みを感じることはなくなったが、運動後はやはり左に比べて右脚のほうがだるく重い感じがある

 

●特定のストレッチをすると太腿奥に引き攣るような痛み・スジが引っ張られるような痛みがある

 

運動中に痛みはないけど運動後に重ダルさがでるということは、まだ右太腿やお尻の奥の筋膜が万全でないということです。

 

施術はOさんに「一番太腿に張りがでる体勢」をとってもらい、その体勢のまま深くにある癒着した筋膜を探りながら矯正しました。

 

施術8回目~13回目 ランナー膝からの解放

 

8回目以降は積極的に長距離のランニングや長時間の登山をしてもらい、右脚の調子を確認しつつ週一回ペースで来院していただきました。

 

来院当初はガチガチに固まっていた右太腿でしたが、施術の甲斐もあって本来の柔軟性を回復し、今では元気にマラソンや登山を楽しんでおられます。

 

Oさんに治療の感想を書いていただきました。

 

ランナー膝治療を受けた方の感想

 

Oさんはランナーの脚の故障でご来院された方の中で最も重症なケースでした。

 

治療を受けていたにもかかわらず悪化していったので、だんだん病気なんじゃないか、精神的におかしいのかと悩んだそうです。

 

しかし、絶対に治したいという強い意志を以て、必要なら関東圏まで足を伸ばす覚悟でいたということでした。

 

ネットで当院のことを知り、他とは違う何かを感じ(←それが何か私は気になるのですが)ダメ元で来てみた、と。

 

長患いの方に「治療を受ければ改善するかもしれない」という希望を持っていただくには、一発目の施術で効果を実感してもらわなくてはなりません。

 

そのためそれなりに痛みを伴う荒療治になることもあります。

 

でも、施術直後にそれまでの痛みが軽減しているのを体感すれば、半信半疑だった方も治療に前向きになって積極的に施術を受けてくれるようになります。

 

それに当院は安静でなく運動を指示します。

 

運動しながら早く治ることが可能なので、当院で改善したお子さんの保護者の方や、近隣の学校運動部顧問の先生に紹介していただいています。

 

もし、あなたもスポーツのケガや故障ででお悩みなら、ぜひいちどご来院ください。

 

他とは違う施術であなたのスポーツライフを応援します!