ストレッチやマッサージで治らないランナー膝はどうなっているのか?原因メカニズムと効果的な施術を解説
●ランニングで膝の外側が痛い
●痛むのは膝の外側や太腿の外側
●骨に異常ないから安静にしろと整形外科で言われた
●リハビリで筋トレ・体幹トレ・フォーム改善をした
●整骨院や整体などでマッサージ・筋膜リリース・鍼灸施術をうけた
●一生懸命ストレッチをした
●それで二年経ったがむしろ悪くなってる?
ということで来院された会社員Oさんの改善例を元に、今回はランナー膝について解説していきます。
ランナー膝を早く治したい、治療受けてるけど良くならないという方に読んでもらえると嬉しいです。
Oさんの施術の感想はこちら↓
このページの目次
ランナー膝とは?
ランナー膝は整形外科学で「腸脛靭帯炎」といい、陸上長距離走者によくみられるスポーツ傷害の一つです。
整形外科学では、膝関節外側の少し上、大腿骨下端の横に張り出した部分(大腿骨外側上顆)と腸脛靭帯が擦れて損傷して痛みをだすとされています。
ランナー膝の原因
原因とされているものは6つ。
- 使いすぎ
- 大腿骨外側の出っ張り(大腿骨外側上顆)が大きい
- 股関節外転筋力が弱い
- 内反膝(O脚ともいいます)
- 回内足(かかとが外側へ傾く状態)
- 腸脛靭帯の伸張性が低いなど
Oさんは6つのうちどれが当てはまるか診てみました。
- 使いすぎ←?
練習しすぎてなったのかもしれないけど、もう2年間走っていないので違うかなというところ。 - 大腿骨外側上顆が大きい←×
通常の大きさでした。
そもそも大きいのが原因なら手術で削るしかないし生まれつきのものなら両足ランナー膝になってるはず。 - 股関節外転筋が弱い←〇
弱くなっていました。
外転とは脚を身体の真横に開く動作、お相撲さんの四股踏みの動きです。外転させる筋肉群は腸脛靭帯に連続しています。 - 内反膝(O脚)である←〇
健常な左膝に比べて僅かに内反膝がみられました。
ちなみにO脚は足が真っすぐだと膝は外側に開き、膝を曲げると内側に入ります。 - 回内足である←〇
これも健常な左足に比べて回内足がみられました。
- 腸脛靭帯の伸張性が低い←◎
伸張性が低くなってて、いわゆる「硬くなっている」状態でした。
3から6が該当しました。
実はこの3~6は相関関係にあります。
どれかが悪くなったら他も引っ張られて悪くなるんですね。
次にそのあたりを解説しましょう。
筋肉と靭帯の硬化が関節機能を狂わす
筋肉の柔軟性が低下して硬くなると、伸縮機能が低下するので筋肉の力は弱くなります。
靭帯が硬くなると、靭帯に繋がっている筋肉の力を上手く伝えられなくなります。
腸脛靭帯には股関節を外転させる筋肉(大臀筋と大腿筋膜張筋)がくっ付いているので、硬くなると外転の力が弱まります。
股関節外転運動は、上半身を基準にみたら”脚を外に広げる運動”になります。
お相撲さんの四股踏みの上げてる脚のほうの動きです。
一方、下半身を基準にみたら”上半身を脚で支える運動”になってますね。
股関節外転筋肉は上体を脚で支える筋肉でもあるワケです。
人間、片足を上げると重心が移動してバランスが崩れます。
片脚立ちのときに上半身が倒れないように、股関節を要にして腸脛靭帯で支えてるんですね。
なので、腸脛靭帯が弱くなると支えきれなくなって上半身が傾きがちになってしまいます。
傾きを戻そうにも筋力が弱ってるのでできません。
すると無意識に膝関節や足関節を使って重心バランスをとって傾きを戻そうとします。
それで膝や足関節に負担がかかって、内反膝や回内足になるんですね。
と、ここまで解説したのは筋肉から関節が悪くなる機序で、逆に関節から筋肉が悪くなる機序もあるので解説しましょう。
関節の不具合が筋肉に影響する
関節は何らかの切っ掛けで不具合を起こします。
一番わかりやすいのが強力な外力が加わったときに受傷する”脱臼”ですね。
次は段差踏み外したり蹴躓いたりで受傷する”捻挫”。
あともう一つ、自分の筋力のアンバランスや、捻挫や脱臼の不全治癒が原因の、いわゆる”関節の歪み”や”骨のズレ”があります。
これは柔道整復では”亜脱臼”、理学療法では”アライメント異常”、カイロプラクティックでは”フィクセイション”と定義されている、関節の機能不全のことです。
要するに骨同士がうまく噛み合ってなくて、関節の軌道がおかしくなっているんですね。
ちなみにこれは脱臼や捻挫と違って筋肉や靭帯の損傷が無くても起きます。
痛みを感じず、自覚症状はほぼ無いので、傷害の隠れた原因になることが多いです。
関節が歪むと、その関節に関わる筋肉に影響が出ます。
関節の軌道に沿って動く骨の軌道も狂ってしまうからです。
内反膝の場合、膝を屈めると正常より少し内側に膝が入りこむようになります。
すると太腿外側の腸脛靭帯は正常時より少し引き伸ばされることになりますね。
なので、片脚荷重動作を左右繰り返す「歩く・走る」動作は、腸脛靭帯に通常の何倍ものストレスを加えることになってしまう。
それで疲労が蓄積して硬くなって、弱くなるというわけです。
「使いすぎ」の本当の意味でもあります。
ランナー膝の治療
Oさんがランナー膝になった経緯
Oさんの場合は、足首が健側と比べてかなり歪になってたので、その影響で腸脛靭帯に過度のストレスがかかり続けて重症化したものと考えられました。
よくよく訊いてみると、ランナー膝になる前にお尻のハムストリングの付け根が痛くなっており、さらにその前に足首の捻挫を経験しておられました。
そのときの足首捻挫を治療した先生は、歪みを残っていたにも関わらず痛みが消えたので治ったと判断したかのかもしれません。
これは”捻挫あるある”で、いわゆる「捻挫グセ」の原因でもあります。
整形外科学は関節の歪みについてはスルーしてますし、整骨院の柔道整復師やリハビリ室の理学療法士も知らない人も多い。
知ってても治す技術を持たない人も多いのです。
それで治ったと判断してランニングをしているうちに、ハムストリングに影響が出て痛くなった。
何度か治療を受けたりフォームを改善してハムの痛みはマシになった。
完治までしなかったけどそれを誤魔化し走り続けた。
そしてシワ寄せが腸脛靭帯に集中して、走るどころか普通の生活でさえ痛みで困るようになってしまった。
経緯はこんな感じです。
来院するまでの経緯
Oさんは来院するまでに複数の整形外科と整骨院に通院したそうです。
最初の整形外科では「骨に異常ないので湿布を貼って安静にして様子みてください」だけだったので一回で切り上げ。
以後他のスポーツ専門の整形外科でリハビリに通い、ストレッチと筋トレをしたそうですが、逆に少し悪くなったような感じだったので整骨院にいくことにしたと。
整骨院はランナー専門とかスポーツ傷害に強いと標榜しているところに通い、マッサージ、ストレッチ、鍼灸治療、超音波治療などいろいろやってもらったそうです。
施術を受けたあと痛みが軽減したこともあったそうですが、数日で元に戻ってしまったと。
というより、2年前にランナー膝になったときは「走ったら痛い」だったのが、「歩いても痛い」に悪化した。
ランニングを止めて治療を受けてたのにも関わらずです。
それでも諦めずにランナー膝を治してくれるところを探していたところ、マラソンチームのチームメイトから当院のことを聞いてダメ元できてみました、ということでした。
治療でランナー膝が悪化した機序
悪化の原因は関節を直さずに筋トレしたことです。
まず、ランナー膝に対して行われる筋トレは、弱化している股関節外転筋(腸脛靭帯や臀部筋)と、弱化筋を補助する大腿四頭筋やハムストリング、あと体幹筋が対象になります。
補助筋を鍛えるのは問題ないんですが、弱化している股関節外転筋を鍛えるのは悪手です。
関節の歪みが筋肉に過剰な負担をかけてランナー膝になったのに、歪みを直さず筋トレするのはまた負担かけてることになるからです。
ストレッチも悪化させた原因です。
ストレッチすると軟らかくなるということでランナー膝に限らずどのスポーツ傷害でも指示されるストレッチ。
ですが、ケガをして硬くなった筋肉にストレッチして軟らかくなることはありません。
ストレッチで軟らかくなるのは、疲労が溜って一時的に硬くなった筋肉の話です。
それに痛いのを我慢するくらいストレッチすると、筋肉が骨にくっつくところに過剰な引っ張る力がかかって筋繊維を離断します。
要は新しい損傷を作り出しているんですね。
それに治療目的のストレッチは、施術者とペアになって筋肉を引っ張る方向・力加減・時間を考えながら行う高度な技術が必要です。
でも実際はどこのリハビリ室でも整骨院でもストレッチの形だけ指導して、あとは自宅でやれ、てのが殆どです。
で、真面目で一生懸命な人ほど痛いのを我慢してストレッチして悪化させる。
そんな方が当院にはいっぱい来られます。
Oさんもまさにその通りでした。
ハムストリングの肉離れもあったので、腸脛靭帯も加えて一生懸命ストレッチしていたということでした。
あとマッサージや筋膜リリースも悪化させた原因です。
あまり知られていませんが、実はマッサージや筋膜リリースは筋繊維を破壊する行為です。
物理刺激なのである程度筋繊維を破断してるんですね。
破断するから軟らかくなって、血液が流れ込むからホカホカ気持ち良くなる。
破断した筋繊維は血液で修復されると柔軟性を回復するので、軽くなったように感じます。
ところが健康な筋肉ならいいんですが、損傷して硬くなった筋肉は十分な血流が確保されてないので、修復されないんです。
損傷を上書きしてることになっているんですね。
軽い損傷なら周りの健康な筋肉の血流で纏めて修復しますが、Oさんほど悪化してカチカチだとそうはいきません。
硬くなった腸脛靭帯やハムストリングにマッサージを受けたのがあまり良くなかったと思われます。
では、Oさんのランナー膝にはどんな治療が必要だったのでしょう?
治すのに必要だったこと
治療に必要なのはシンプルで、
- 硬くなった腸脛靭帯とハムストリングスを軟らかく戻す
- 足関節と膝関節の歪みを直す
この二つです。
まず、痛みの除去を優先して、硬くなった腸脛靭帯とハムストリングを軟らかく戻します。
長患いかつストレッチでここまでカチカチになった筋肉は、気持ちいい程度のマッサージや筋膜リリースじゃ軟らかくなりません。
むしろ硬くなるのはさっき言ったとおりです。
ではどうするかというと、非常に強い指圧をかけて、硬くなった筋繊維を一旦壊してやります。
中途半端な強度じゃダメ、てことです。
こうすると筋肉の収縮を邪魔していた硬いところがなくなるので、直ちに痛みは軽減します。
あとは壊したところが再生して軟らかく戻っていくように、大量の血液を循環させる必要があります。
そのためOさんには次の日からランニングを指示しました。
運動が一番血流を増やすことができるのと、施術の効果があったかどうか体感してもらうためです。
施術後数日間練習を続けてもらうと、軽減した痛みが日ごと弱くなっていく場合と、徐々に強くもどっていく場合があります。
戻っていく場合は、
- 施術を受けたあとはいいけどすぐ元に戻る
- 練習休んでたら痛くなくなったけど再開したまた痛くなる
というよくある話と原因は同じです。
関節の歪みが残っているからまた元に戻ってしまうんですね。
関節の歪みを直す方法は3つ。
- インソール
- テーピングやサポーター
- 徒手整復
インソールは回内足の補正に良く使われますね。
市販のものからオーダーメイドで造ってもらう高価なものまで色んな商品があります。
テーピングは関節の歪みを補正する方向に良い力加減で巻かないといけないので、高度な技術が必要になります。
サポーターもたくさん種類があるので、自分に見合う商品を選ばないと逆効果になるので要注意です。
徒手整復は関節に牽引をかけて僅かな隙間をつくって捻転させ歪みを直します。
いちばん即効性と実用性があるのは徒手整復なんですが、上手く整復するには技術要ります。
整復を上手くできても筋肉の引っ張りが強すぎて歪みが戻りがちなときは、馴染むまでテーピングで補正することもあります。
Oさんの足首と膝の歪みはそれほどクセが強くなかったので、比較的簡単に直せました。
一回目の施術の翌日から一週間後に来院するまで、症状の変化を確認するためにランニングを再開してもらいました。
痛みがどれくらい減ったか?痛む場所や痛み方に変化はあったか?
施術後一日二日と日数経過していくうち症状は改善傾向だったか、ぶり返したか?
2回目の施術に来院されたときに調子を尋ねたら、かなり痛みがなくなって驚いている、ということでした。
さすがにランニングは全力ではできないということでしたが、それでも5割の力で走れるようになったと。
治療の方向性がばっちり嵌ったようです。
2回目は腸脛靭帯とハムストリングの残っている硬いところと関節をチェック。
3回目に来院されたときにランニングしながらも日ごと症状は軽くなっていってるとのことだったので、あとは通院しなくても治っていきますよとお伝えしました。
Oさんは結果的にハーフマラソンに万全の体調で出場したいということで通算8回ご来院いただきました。
その後マラソンチームの方を数人ご紹介いただいたので、当院の治療にとても満足していただけたと思います。
治りにくいランナー膝の治療まとめ
- 硬くなった筋肉と歪んだ関節の両方を治す必要がある
- 硬くなった筋肉に気持ちいマッサージや筋膜リリースなどは刺激不足で逆効果
- 歪んだ関節は整復手技・テーピング・インソールで施術・治療
- ストレッチは正しく行わないと悪化する
Oさんは症状がかなりキツい長患いでしたが、とても早く改善できてラッキーでした。
ちょっと出木杉な感じがしますが、当院ではだいたいこんな感じで改善しています。
感想文にありますが、Oさんは二年間複数の整形と整骨院に行ったのに、良くなるどころか悪くなった。
自分はランナー膝でない何かの病気か精神的なものかと悩んだこともあったそうです。
まれに「痛いのは精神的なもの」という整形外科医がいますからね。
そして新しい整骨院に行くと今まで行っていたところと同じことを言われる。
ここが硬いですね、マッサージします、ストレッチしてください。
この筋肉が弱いので鍛えましょう、フォームが悪い、靴が悪い、ウォーミングアップしましょう。
どうして治らないのか訊いてもネットで書いてあるようなことしか返答してくれなかった。
治療というか医者や整骨院に不信感があったんですね。
なのでOさんの治療は即効性を第一に進めました。
「ココがこうなっているのでこうしたらこうなります」と具体的に説明する。
悪い部分を施術をしたら、そのあと直ぐに身体を動かして効いたかどうか体感していただく。
まず、施術が効くかどうかの不安を取り除かないと治療を続ける気になるはずありません。
とはいえ、施術は痛みを伴うこともあったので、なによりOさんの
絶対に治してマラソンに復帰したい!
という強い信念と決意があっての結果だと思います。
この記事を読んでいるあなたもランナー膝でお困りなら、ぜひ私にご相談ください。
いろんな疑問や不安を振り払い、当院の施術を受けようと決意されたなら、敬意をもって最善の治療をお約束いたします。