肉離れの原因とメカニズム・症状と応急処置を解説

このようなことを知りたい方に向けた記事です
  • 肉離れの概要について知りたい
  • 肉離れの応急処置を知りたい
  • 肉離れの治療期間について知りたい

 

肉離れはたぶんスポーツ経験者はもちろん、そうでない人もなったことのあるケガなんじゃないでしょうか。

 

統計をみると、陸上競技やサッカーなど直線的な動きや瞬間的に強大な力を出すときは太腿に多く、テニスや卓球など左右にシフトウェイトする競技は脹脛に多いようです。

 

私の接骨院では、患者さんの年齢が若いと太腿の肉離れが多く、年齢が高いと脹脛の肉離れが多いようです。

 

短距離スプリンターはほとんどハムストリングの肉離れでやって来ます。

脹脛の肉離れは、若い頃に運動部だったお父さんが、子供さんの運動会の保護者参加のリレーで頑張りすぎて脹脛を肉離れしてやってきます。

中年層のデスクワーカーの人が、週末フットサルで肉離れになるというケースも増えてます。

 

重症なら松葉杖のお世話になる肉離れ。

殆どの人は肉離れになってもシップして放置、知らん間に治ったわ!で済ましますが、そうならないことも多々あります。

自己流で治ったと思ったら、思わぬ後遺症に悩むことも。

 

そうならないように、肉離れになったときの応急処置やケアをざっくり解説していきましょう。

 

肉離れを起こす原因メカニズム

肉離れは、筋肉が縮んで力をだしている最中に、反対方向の力で引っ張られると受傷します。

ここでは、太腿裏の筋肉(ハムストリング)を例に解説していきます。

 

“走行”を例にすると、ハムストリングが縮んで力を出しているのは、脚を後ろに送るときと、膝を曲げて踵をお尻に近づけているときです。

 

 

逆に脚を前に出すときと、膝を伸ばすときは、太もも前の大腿四頭筋が縮んで力をだしています

 

 

ハムストリングが縮んで力を出しているときは、大腿四頭筋は邪魔をしないように力を抜いて伸ばされる。

大腿四頭筋が力を出すときはハムストリングは力を抜いて伸ばされる。

 

タイミングよくハムストリングと大腿四頭筋の力を抜いたり入れたりして、走るという動作がスムーズにできるわけです。

 

このタイミングがズレて大腿四頭筋が力を抜かなければならないのに入ってしまうと、対抗牽引力が加わってハムストリングが肉離れを起こすんですね。

 

 

肉離れの症状推移

肉離れは受傷直後の急性期症状から、回復期を経て治らない場合は、慢性期に入ります。

■急性期(受傷直後~約2日)
 炎症反応(腫れ・内出血・熱感)と自発痛(じっとしててもズキズキする)

■回復期(約3日以降~約3週間)
 炎症が消退 自発痛が運動痛(動かすと痛い)に変化

■慢性期(受傷から3週間以上)
運動痛が残っていたり、運動中は大丈夫だが運動後に痛みがでたりする

 

慢性期になるとハムストリングスの中に筋硬結と呼ばれる塊り、つまりシコリができます。

肉離れの原因と損傷度

  • ストレッチなどウォーミングアップ不測
  • 練習のしすぎ(オーバーユース)
  • 筋肉のバランスが悪い
  • 関節や筋肉が硬い
  • 水分・ミネラル不足
  • 運動不足

などが肉離れの原因とされています。

 

損傷の程度によって、軽度(1度)・中度(2度)・重度(3度)に分類されます。

  1. 軽度
    反復動作などによる過剰負荷が筋に微小断裂を与え、十分な修復を得ないまま機能障害を起こす。
  2. 中度
    急激な負荷による部分的な断裂
  3. 重度
    完全な組織の断裂(筋断裂)

3度(重度)は肉離れというより筋断裂に分類されますが、一般的には「酷い肉離れ」と呼ばれることがほとんどですね。

 

肉離れの症状

肉離れになると直ぐに腫れてきて、触ると熱く感じることもあります。

傷めた場所によってはだんだん内出血してきて、翌日になると紫色になってることもあります。

内出血は自然に散っていくのがふつうなんですが、たまに筋肉内にできた血溜まりが骨に変化してしまう骨化性筋炎になることがあります。

ボコッとしたピンポン球大の骨っぽい塊ができてしまうと、のちのちちょっと厄介です。

 

痛さは脚に体重を掛けられず松葉杖のお世話にならないといけない程酷いこともあれば、歩くのは大丈夫だけど全力ダッシュは痛いというような軽いものまで様々です。

 

日常動作で痛みがなくなったから完治というワケではないことに注意しましょう。

ストレッチかけると引き攣るとか、筋肉に張りを感じたり、疲労が抜けにくいというのがあればきちんと治っていないサインです。

再発の危険があるし、パフォーマンスは低下したままになるのでしっかり治しましょう。

 

こんなときは要注意

受傷したとき、急激に腫れが広がってパンパンになったら要注意です。

筋肉の奥で大量に内出血して、その圧力で組織が壊死するコンパートメント症候群の可能性があります。

サッカーしてて蹴られたとか、柔道の足技で蹴られたとかの打撲でよくなりますが、肉離れでも稀になります。

ケガをした場所より先を触って感覚がないとか、しびれる、青白くなっているなどの症状があればすぐ病院に行きましょう。

 

肉離れが治るのはどのくらいの期間がかかる?

軽くて3週間前後、重症だと一ヵ月半くらいというのが医学書にかいてありますが、個人差がかなり大きいので目安程度に考えてください。

 

というか、この「治る」というのは完治の意味で、痛みがなくなるまでの期間という意味じゃありません。

ふつうに歩けるようになるのはどれくらいの期間が必要かと言うと、軽けりゃ翌日から、重症でも一週間もあれば歩けるようにはなります。

 

治療に掛からず放置していても、日数経過とともに痛みや腫れは退いていき、日常生活に支障がないくらい回復します。

でも、ストレッチやスポーツで痛み・引き攣り・違和感が残ることも多くあります。

こうなると再発リスクが高いしパフォーマンスも落ちたままなので、きちんと治療にかかったほうが良いですよ。

 

肉離れの応急処置とケア

ケガした日と次の日までは冷やす、3日目から温めるというのが基本です。

 

受傷か直後から48時間

医学的・生理学的に受傷直後は患部を冷やすのは吉温めるのは凶とされています。

 

スポーツシーンの応急処置の基本はRICE処置(安静・冷却・圧迫・挙上)です。

寝るか座るかして患部を心臓より高く上げ、氷嚢などで抑えます。

 

アイシングは必ず氷嚢を使いましょう。

専用のアイシングパックなどが市販されていますが、なければビニール袋に水と氷を入れたもので十分です。

 

アイシングは生理学上摂氏零度でないと意味がないので、アイスノン、保冷剤、その他の冷却グッズは有効ではありません。
特にコールドスプレーは何の効果も見込めません。気休め程度です。

 

受傷後およそ二日間は、内部の損傷した毛細血管から出血して炎症物質を出します。
冷却すれば毛細血管が収縮するので、内出血を抑えることができ、症状の悪化を防止できるとされてます。

 

整形外科の注射やシップも炎症を抑えるので有効ですが、4日以降は炎症じたい治まっているので効果はありません。

整形でもらうシップは手軽でずっと貼ってる人いますが、シップもクスリなので皮膚から毛細血管通って内臓に溜まるので止めましょう。

 

温熱は毛細血管を拡張させて内出血を促すので、受傷日のお風呂は症状を悪化させるとされています。

温泉入って体を治す、ていう感覚で入る人が多いんですが、シャワーくらいにしといてください。

 

受傷3日後以降

炎症はおよそ3日で治まります。

受傷3日後以降は、今度は温めましょう。
温めると血流が促進され、組織の回復が早まります。

お風呂や温湿布、カイロなど温かいものを患部にあてておきます。

 

治療とセルフケア

肉離れの回復は安静と血流促進が基本になります。

治療は安静を前提に損傷筋に対してマッサージ、医療機器による物理療法、鍼灸治療、筋膜リリース等を行います。

 

テーピングやサポーターは症状の軽減に有効ですが、締め付けることで血流を阻害し、回復を妨げることになるので、常用するのは控えた方がよいでしょう。

 

ぶっちゃけ言うと、肉離れは治療に掛からずとも放っておいても日常レベルで痛みないくらいまでは回復するケガです。

困るのは一週間たっても痛みが退かないとか、全力ダッシュしたらまたブチッといきそうとか、そういう競技レベルで完治しないケースですね。

 

このようなときは自分でなんとかしようとせずに、スポーツ選手の治療に強い整骨院か鍼灸院にかかるのをお勧めします。

 

まとめ

  • 肉離れになったらすぐにRICE処置をしましょう。
  • ケガして二日は温めないで冷やしましょう。お風呂も禁止です。
  • 3日目から温めてやると筋肉の柔軟性が戻って回復しやすくなります。
  • テーピングやサポーターは痛みの軽くするが治りを遅くするのでお勧めしません。
  • ぶっちゃけ放っておいても治ってしまうことも多いが、きちんと治らないとスポーツ選手は後々困りますよ。