ニーイン・トゥーアウトまたはニーアウト・トゥーインの原因とメカニズム、改善法
地面に足を着いて膝関節を曲げたとき、画像左のように膝頭が内側に寄って爪先が外側に向くのをニーイン・トゥーアウト(Knee in – Toe out)、
画像右のように膝頭が外側に開いて爪先が内側に向くのをニーアウト・トゥーイン(Knee out – Toe in)といいます。
このような関節と筋肉の連携による身体の動きを運動連鎖といって、その特性はケガやスポーツのパフォーマンスに影響します。
また、姿勢にも関係してくるので、肩こりや腰痛の要因にもなります。
ここでは、ニーイン・トゥーアウト(ニーアウト・トゥーイン)のメカニズムと原因を解説し、改善法を紹介していきます。
といってもあんまり詳しく書くと漢字と専門用語のオンパレードになって解りにくくなってしまうので、サラッと簡単に書いて行きます。
このページの目次
ニーイン・トゥーアウトが原因になり得る下肢の障害
ニーイン・トゥーアウトは、日本語で「膝が内、爪先が外」
膝と爪先がおかしな方向に向くので、膝や足まわりのいろんなケガの元になります。
膝まわりの障害
まずは膝まわりから。
図は膝がニーインしたときの状態です。
関節の外側の隙間が狭くなってますね。
こうなると中にある外側半月板を押しつぶし気味になります。
なので、外側半月板損傷をおこしやすい。
逆に膝の内側は広くなってます。
内側半月板が押しつぶされることはないんですが、こっちは靭帯を伸ばし気味になります。
なので、内側側副靭帯損傷をおこしやすい。
あともう一つ、膝関節の奥にある靭帯も引き伸ばされ気味になるので、前十字靭帯損傷をおこしやすい。
膝周りの筋肉にも変な角度がつくのでおかしくなります。
太腿の内側から膝の内側にくっつく筋肉が引き伸ばされ気味になります。
なので、鶩足炎をおこしやすい。
太腿前面からスネの出っ張りにくっつく筋肉も角度がついて引き伸ばされ気味になるので、
ジャンパー膝やオスグット病になりやすい。
オスグット病についてはこちら
→オスグット専門治療 | 原因メカニズムから解くマッサージ・テーピング・ストレッチで治らない理由
足まわりの障害
次は足まわりです。
“爪先が外を向く”てことは、”足首の関節が外回りに捻れている”ということ。
足首の捻れは筋肉を引っ張り気味になります。
脛の内側から内くるぶしの後ろを通って、土踏まずや足の指にくっつく筋肉の引き伸ばし作用でシンスプリントや脛骨疲労骨折、
踵の裏から足の指までくっついて足指を曲げる筋肉の作用で足底腱膜炎になるリスクが増加します。
ニーアウト・トゥーインが原因になり得る下肢の障害
ニーアウト・トゥーインの場合はニーイン・トゥーアウトの逆パターンなのでサラッと。
膝周りに起こるトラブルは膝外側側副靭帯損傷、内側半月板損傷、腸徑靭帯炎(ランナー膝)など。
足では有痛性外脛骨など。
ニーイン・トゥーアウトのメカニズム
ここからはニーイン・トゥーアウトに焦点を当てて解説していきましょう。
人体には重力が掛かっているで、足元からの影響が全身の筋肉と関節に及びます。
下図は足首の関節の傾きが、脚と骨盤にどのような影響を与えるかを示したものです。
内側に傾斜をつけた台の上に立つと、足首の関節は内側に倒れます。(これを回内足といいます)
そうすると、膝関節や股関節は回内足に対応して、脛と太腿を内に捻れるようになります。
これは骨のデザインによって決まっている事なんですね。
つまり、ニーイン・トゥーアウトは、足首の関節の状態に左右されるということを示しています。
ニーイン・トゥーアウトの原因
関節の動く道筋は、その関節を動かす複数の筋肉の引っ張り具合で決められています。
なので、どこか一部の筋肉が力を上手く出せないでいると、本来の正しい関節の動き方から外れてしまいます。
バランスよく引っ張り合わないと、関節はちゃんと動いてくれないんですね。
逆に、関節じたいが正しい動き方をせず道筋を外れると、まわりの筋肉は引っ張るタイミングがズレてしまいます。
コースを外れた関節に引っ張られる形になって、片一方の筋肉は引っ張られすぎ・もう片一方は緩み過ぎ、となって、筋肉の調子が悪くなります。
ニーイン・トゥーアウトの原因①足関節の歪み
もう書いてしまいましたが、ニーイン・トゥーアウトで一番需要なのは、足関節です。
地面に着いた足に体重がどう掛かるかによって、足首から上の状態が変わるからです。
下図は爪先を真ん前に向けて両足を真っ直ぐ揃えた状態を後ろから見たところです。
真ん中の「回内足」になる人が、ニーイン・トゥーアウトになりやすく、右の「回外足」になる人は、ニーアウト・トゥーインになりやすいというデータがあります。
要するに関節が歪んでるということです。
整形外科や理学療法では関節アライメント不良、私たち柔道整復師は亜脱臼と呼んでます。
一般的には「関節のズレ」「関節の歪み」と呼ばれてますね。
回内足は、ふくらはぎの軸に対して、踵の軸が内側に倒れるように傾いています。
踵が内側に倒れると、骨の配列の関係で足の裏全体が掌を開くように広がって、土踏まずが低くなります。
つまり、偏平足になるのです。
土踏まずは足に体重が掛かかったとき、効率よく足全体に負荷を分散させる働きがあります。
その土踏まずが潰れると、足に体重が掛かったとき、足は内側に向かって崩れます。
偏平足の影響で、足首が外回りに捻れてしまうんですね。
ちょっと注意してほしいのは、偏平足なら必ずニーイン・トゥーアウトになるわけではないということ。
偏平足でも生まれつきの人はニーイン・トゥーアウトしなかったり、ニーイン・トゥーアウトしてても何の問題もなかったりすることのが多いのです。
あくまで、ニーイン・トゥーアウトの足が偏平足なら、それが原因の可能性が高いということです。
特に左右の足を比べて片方がニーインしていて、何らかの症状があるときはそうだといえるでしょう。
ニーイン・トゥーアウトの原因②股関節を動かす筋肉の問題
膝を屈めたらニーインするとき、股関節はどんなふうに動いているか?
よーく見てみると、股を閉じる方向に動きつつ、内側に捻じれこんでいます。
女の子が内股座りしてる時の股関節と同じ状態です。
このように、関節を一方向に偏って使い続けていると、常に縮んでる筋肉と常に引っ張られてる筋肉がでてきます。
内股の状態は、股の閉じて内側に捻じる筋肉が縮んでて、開いて外側に捻じる筋肉は引っ張られています。
筋肉は引っ張り続けられると力が弱くなります。
ゴムひもを伸ばしっぱなしにしてたら緩くなるのと同じ。
ニーインで股関節を曲げたとき、内転内旋筋のほうが外転外旋筋より強く働く=外転外旋筋は引っ張り続けられているので、外転外旋筋は弱くなります。
なので、これは外転外旋筋が弱くなるからニーインするというより、ニーインが原因で外転外旋筋が弱くなるといったほうがいいですね。
ニーイン・トゥーアウトの改善方法
改善方法は、ニーイン・トゥーアウトしてる脚の、どの原因に対して行っているか?で、二系統に分かれます。
筋肉にアプローチするか、関節にアプローチするか、です。
その中で改善方法は大きく分けて三種類あります。
- 運動療法
- 装具療法
- 徒手療法
それぞれ解説していきましょう。
運動療法・筋トレエクササイズ
俗に言うリハビリのことで、スポーツ整形外科の理学療法士や、スポーツトレーナーに指導される筋トレ的なエクササイズのことです。
ニーイン・トゥーアウトに関係する筋肉を鍛えることで、筋バランスをを整えて治していきます。
■股関節の筋バランスを整える小・中臀筋エクササイズ
■足裏筋を強くして脱扁平足目的のタオルギャザー
■特殊装具を使った運動療法もあります
装具療法・テーピング
使用する装具はインソール。
つまり靴の中敷きです。
色んなメーカーのたくさんの種類があります。
自分に合うのを見つけて装着しましょう。
値段の高いのを買って、合わないけど勿体無いからといって使い続けるのだけは止めましょう。
余計悪くなります。
私は安いやつから試してくことをお勧めしてます。
テーピングもここで紹介したいのですが、膝と足に加えてやり方がいっぱい在りすぎること、実際に診てから巻いてみないと効果がわからないどころか悪化することもあるので止めておきます。
検索かけたらたくさん出てくると思いますが、テーピングは巻いてみて調子良い感じがあれば○、少しでも違和感や余計痛みが出るとか違う場所に痛みや窮屈感があれば×です。
もちろん、トレーナーや治療師など他人に巻いて貰ったときもそうです。
「このテーピング合わないな」と思ったら、遠慮せずちゃんと伝えましょう。余計悪くなりますよ。
徒手療法
徒手療法も関節にアプローチするか筋肉にアプローチするかの二系統あります。
- 直接ズレた関節を戻して治す方法
- 硬くなった筋肉を軟らかくして筋バランスを整えて治す方法
関節のズレを戻す方法は、柔道整復師なら整復、カイロプラクターならアジャスト、整体師なら矯正、といったように名称は異なりますが、術者の手や器具を使った療法があります。
筋肉を軟らかくする方法は、あんまマッサージ、指圧、鍼灸、筋膜リリースなど。
どの療法が効くとかはありません。
効果は術者個人の技量で大きな差があるからです。
ニーイン・トゥーアウト改善方法まとめ
あなたの抱える身体の問題が、本当にニーイン・トゥーアウト由来によるものかどうかを判断してくれる専門家に相談することが先決です。
その上で、その専門家がどのようなアプローチでニーイン・トゥーアウトを改善する治療計画を立ててくれるのか、きっちり話し合いましょう。
理想を言えば、三種類の方法全てを把握している専門家がベストです。
整形外科医は基本的にニーイン・トゥーアウトの理論は知っていますが治す方法は知りませんので、相談するなら柔道整復師、鍼灸師、理学療法士、スポーツトレーナーなどにしましょう。
運動療法だけでは改善が遅いので、早く症状を改善したいなら、関節や筋肉にアプローチできる技術を持ち、機能運動学に深い造詣をもつ施術師にかかるのがお勧めです。
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