グロインペイン股関節痛が治らない!治療を受けても良くならない理由とやってはいけないこと

今回は、当院で一番多いスポーツ障害であるグロインペイン症候群(股関節痛・鼠径部痛・恥骨結合炎etc)について書いていきます。

グロインペイン症候群の整形外科の考えやストレッチ・テーピングは前に書いた↓

ので端折るとして、ここではグロインペインが治療を受けてもなかなか治らない理由を解説していきます。

すでにグロインペインで整形外科や整骨院、整体に行ってるけど治らず悩んでいる方、あと治せず悩んでいる同業の人にも参考になると思いますので、ぜひ読んでもらえると嬉しいです。

グロインペイン症候群の一般論

 

まず、グロインペイン症候群の整形外科学的見解についておさらいしましょう。

整形外科ではグロインペインの原因を、使いすぎ(Overuse)としています。

要するに練習のし過ぎで悪くなったと言ってるんですね。

痛みが出るまでの順序は、

①練習のし過ぎで太腿の筋肉に過剰な負荷がかる

②回復力が追い付かず筋肉が硬くなる

③炎症が起きて発痛する

て感じです。なので治療は、

①に対しては安静にして運動の禁止

②に対しては睡眠と栄養をとる

③に対しては炎症を抑えるシップを貼る

が定番です。

リハビリなどの運動療法は、傷んだ筋肉を負荷に耐えられるように筋トレしたり、負荷を減らすために周りの筋肉を筋トレしたりします。体幹トレーニングやバランストレーニングがそれですね。
これは「使いすぎても耐えられる身体にしよう」というのが目的です。

マッサージや筋膜リリースなどの施術やストレッチ、電気治療は、血流量を上げて炎症を散らしたり柔軟性を上げたりして回復を促進させる効果があります。
これは「硬くなった筋肉を軟らかく戻そう」というのが目的です。

これで治ればいいんですが、運動療法に何か月も費やしたり、施術を受けて治ったと思って復帰したらまた痛くなったりなんてことはザラです。

当院にはそんな人ばっかり来院します。チーム指定の整形外科や、いきつけの整骨院がファーストチョイスでしょうから、当院が後になるのは当たり前なんですけど、ことグロインペインに関してはすごく遠方の方が来られます。
たまに東日本の方がメールやLINEで東京で施術していませんかとか弟子か知り合い紹介してくれませんかとかの問い合わせがあったり。
よっぽど治らないんだな、て思います。

そういう私も、今では平均3回くらいの施術で治せるようになりましたけど、やっぱり駆け出しのころは全然良くできませんでした。
文献やネットで何か良い方法はないかと調べていたものです。

なので、なぜ施術で治すことができなかったかを知ってもらえたら、あなたの治療院選びの参考になるかもしれませんし、同業者の人ならなぜ治せなかったのかわかるかもしれませんので、ぜひ一度目を通してみてください。

筋肉は全体が硬くなるのでなく一部の筋繊維が硬くなる

まず、グロインペインの原因とされる「硬くなった太腿の筋肉」ですが、この言い回しは正確じゃありません。
筋肉全体の柔軟性が低下しているのはそうなんですが、よくよく触って調べてみると、筋肉の中の一部の筋繊維がムチャクチャ硬くなっているのがわかります。

あなたのグロインペインが股間に近い場所が痛むのなら、仰向きになって脚をガバッと開いてください。

痛むのが赤印の場所だとすると、そこに繋がる引き攣るような痛みが内腿に走るはずです。わかりにくかったら、誰かに膝を床方向に押し下げてもらってください。

脚を広げたとき太腿の筋肉は伸びないといけないのに、硬くなった筋繊維は伸びることができないからこんなふうに痛みとなって現れます。

なのでグロインペインになってる人の太腿を探ると、股間や鼠径部に痛みがあるところを起点にして、硬くなった筋繊維が線状に伸びています。

骨盤の外側の出っ張りに近い場所(下前腸骨棘)に痛みがあるなら、そこを起点に太腿の外側に、股間に近い場所に痛みがあるなら内転筋沿いに硬くなってます。

太腿の筋肉には、キックやランで強大な負荷が繰り返しかかります。
健康で柔軟性のある筋繊維は目いっぱい伸び縮みしますが、硬くなった筋繊維は伸びないので伸縮率に違いが出ます。
また、筋繊維と骨のくっ付いている付着部に過剰な引っ張る力がかかります。

そのせいで少しずつ傷がついて、積もり積もると痛みが出るようになるんですね。

腹筋運動やクシャミで下腹部に痛みが出るケースでは、太腿の内側の奥に硬くなった筋繊維を触れます。
太腿内側の筋肉(内転筋群)は、下腹部の腹筋と筋膜で繋がっているので、硬くなった内転筋が股間の奥で腹筋を引っ張って痛みを誘発します。

 

 

参考に内転筋群に問題のあった方の治療例を挙げておきますね。
→内腿が痛くてボールが蹴れないグロインペイン症候群の完治例 / 大阪府サッカー強豪校N君の場合

 

太腿の硬くなった筋繊維を軟らかくすれば痛みは改善するので、我々術者はマッサージ、ストレッチ、筋膜リリース、鍼灸などの手技療法で施術するのです。
超音波、ラジオ波、低周波などの医療器械も目的は同じです。

しかし、施術で良くなるときもあれば、ラクになるけど直ぐ元に戻るとき、全然効かないときもあります。

なんで効くときと効かないときがあるのか?

自戒を含めて言ってしまえば「腕が悪い」てことなんですが、具体的に言うと施術で患部に加える刺激が足りていない、てことです。

どういうことかというと、例えば筋繊維をゴム紐として、硬くなったゴム紐を軟らかくするにはどうしたらいいかいいでしょう?

・引っ張って伸ばす

・垂直方向にギター弦のようにベシベシ弾く

・お湯かけたりドライヤーで温める

・ゴムを軟らかくする薬を塗る

こんなことが思いつきますよね。これらを施術に置き換えると、上からストレッチ、マッサージ、温熱療法、マッサージオイルになります。

ですがこれ、ゴム紐にはダイレクトにできるからすごく効果あるんですが、筋繊維にはそうはいきません。筋肉は筋繊維の束の集まりで、さらに分厚い脂肪層と丈夫な皮膚組織で包まれているからです。
硬くなった筋繊維はその中に埋もれているので、気持ちいいくらいの施術では刺激が分散されて効かないんですね。

ではどうしたらいいか?
二つの要件が必須でした。

①硬くなっている筋繊維を正確に探りだせること

②探り出した筋繊維に変化を齎せる強度の刺激を加えること

筋繊維の束を分け入るように皮膚の上から強い指圧をかけて探っていけば、硬い繊維に触れることができます。微妙にわかりづらい時は、患者さん自身に「コレ?」と訊いたら「ソレです!」と答えてくれるので、間違うことはありません。
あとは硬いゴム紐をギューッとシゴいてやるのと軟らかくなるのと同じ理屈で、そのまま繊維沿いに強指圧をかけてコスってやれば即軟かくなります。

上手いこといったら一回ギューッとやるだけで症状がなくなって、次の日から「痛みなしで練習再開できました!」と改善できるようになりましたが、暫く経ったらまた痛みが再発するケースがでてきます。

痛みがとれたから治癒したとは言えない

軟らかくした筋繊維がまた硬く戻らないようにしなければならない。筋繊維を硬くする根本的な原因を取り除けていなかったということです。

根本的な原因とは何か?それについては先にトレッチについて書いたあと説明しましょう。

ストレッチのメリットとデメリット

ぶっちゃけ言うと、ストレッチで治るようなグロインペインなら、施術にかからなくても治ると個人的に思ってます。※個人の感想です

だいたいどこの整形外科や整骨院でもストレッチしてくださいと言ってますし、ウチに来院した選手も例外なくストレッチをするよう指導されたと言います。

治療にストレッチが使われるのは、ストレッチをかけると筋肉の血流量が増えたり関節可動域が増えたりするデータがあるからなんですが、それはあくまで筋肉全体の話です。
ストレッチをかけると硬くなった一部の筋繊維がどう変化するかというデータはありません。

ちょっと考えてみてください。

健康な筋繊維と硬くなった筋繊維を同じようにまとめて引っぱったらどうなるでしょう。


伸び率が違うので硬い筋繊維に過剰なストレスが加わるだけです。そもそも練習でこういう状態を繰り返すから傷めたのに、自分で同じことするってなんのこっちゃです。

それに筋繊維と骨くっ付いている部分には特に強い牽引力が加わるので、組織を引き剝がすような微細な損傷が加わります。
太腿筋が付着する恥骨や腸骨、鼠径靭帯に痛みが出るメカニズムがコレです。

なんかストレッチってとにかく身体に良いみたいな世評ありますが、ケガの予防にはなるけど治す効果なんてありません。
ストレッチ直後に張りや痛みがマシになるのは、無理くり伸ばされた硬い筋繊維と周りの繊維との柔軟性がある程度均されるからです。

一次的なものなんですね。

それにストレッチって、かける強度・時間・呼吸で柔軟性や関節可動域や筋出力や自律神経諸々に影響するっていうすごく細かいデータがあるんですが、そんなの指導されたことありますか?当院に来たグロインペイン患者さんの誰に聞いても「ただストレッチしろと言われただけです」て答えしか聞いたことない。

で、真面目で一生懸命な人ほど痛いのを我慢してストレッチして、余計に筋繊維を硬くして付着部傷めて重症化しています。

なので当院では治療期間中の患部のストレッチは禁止してます。

筋肉を軟らかくできたとて

治療で筋繊維を軟らかく戻せた、痛みがなくなった!と思っても、練習を再開したら、やっぱり痛い。
これは施術で軟らかくした筋繊維がまた硬く戻ってしまっているからで、根本的な原因があると上で書きましたね。

原因は「関節の可動不全」です。

関節が「正常な軌道で動かなくなっている」ということです。
柔道整復では亜脱臼、理学療法では関節アライメント不良と呼ばれる状態で、俗にいう関節のズレとか歪みとかのことです。

関節は筋肉で動かされると同時に、筋肉の力の方向を導くので、関節がズレて歪んでると、筋肉の力の方向が乱れます。
筋肉と関節は連動していて、この関節がこう開閉したらこの筋肉はこう収縮する、てのが脳でプログラミングされてます。
なので関節がズレて歪んでいると、筋力が低下したり柔軟性が低下したりしますし、関節の安定性も低下します。

例えば、足関節の安定性低下は片足立ちになったときバランスを取りづらくなるので、ぐらつきを抑えるために余分な力を無意識に出し続けることになります。

上で書いた”一定の筋繊維に負荷がかかりすぎる現象”が、関節によって引き起こされてるんですね。

膝関節にズレがあると、関節を構成する骨同士の相対位置が本来の位置から少し狂ってしまいます。

 

 

すると膝関節を跨ぐ大腿筋の外側と内側のテンションに微妙な差が生まれます。僅かに引っ張られる筋繊維と、わずかに緩い筋繊維が無意識のうちに出来上がるので、このまま運動をすると引っ張られすぎてる筋繊維には過剰な負担がかかってしまうというわけです。

図はかなり誇張して膝関節を歪ませて描いてますので、素人目には全くわかりません。それにズレは三次元的に上下左右前後旋回と複雑に起こるので、視診触診検査の技術と、関節のズレを正常に戻す技術が必要になります。

改善方法は、関節軌道を補正するように貼るテーピングと、徒手による整復施術があります。

 

グロインペイン(股関節・鼠径部痛)を治すには

グロインペイン症候群といえば股関節に問題があるように思いがちですが、股関節じたいに問題のあることはごく稀です。
鼠径部など脚の付け根が痛いのは、殆どが太腿の筋肉の異常によるものです。

ぶっちゃけいえば硬くなった筋繊維が痛みの発生源なので、軟らかくもどしてやれば痛みは緩和します。マッサージやストレッチ、電気治療をするのはそのためです。

ですけど、治療や施術にかかってもなかなか治らず、長い間練習できなくてどうにかならないかと悩んでいる選手はたくさんいます。

●硬い筋繊維が肉の奥にあるのでヤワな施術では効果がない

●筋繊維を硬くした要因を取り除かないと痛みの緩和は一時的なものになる

この二つが治療や施術で良くならない理由です。

もし、あなたがグロインペイン症候群のせいで練習できない、試合に出られない、治療受けているけど良くならないと困っているなら、ちゃんとスポーツのケガを治してくれる専門家にかかりましょう。

ちなみに整骨院はピンキリなので、スポーツ選手がかかるべき整骨院の選び方を置いておきますね。

あなたが良い専門家に巡り合うことを願ってます!